9/18/2012

日本建築学会大会(東海):建築学会賞受賞記念講演(その3)

3.今後の研究

より科学的に建築材料を見つめる、ということがさまざまな効用を生むということが説明できたのではないかと思います。

近年の分析化学は、簡単になり、安くなり、そして技術的には非常に高度になっていますが、これらと建築材料の間は、ずいぶんと隔たりがあるように思います。

100年なり、200年なりの経年変化を想定して材料を使いこなすには、それなりの科学的背景が整理されていなければ、難しいでしょう。、30年データの外挿でうまくいくほど単純ではないはずです。





そういった観点で、私はたとえば、炭素同位体、酸素同位体を用いたコンクリートの経年変化研究を地質化学の先生方と研究をさせていただいたり、あるいは最近では小角散乱やNMRの検討を理学部の方と実施させていただいていますが、新しいことを理解するには、理学の分野に踏み込むほかありません。
ヨーロッパのNanocemプロジェクトでは、大量のサイエンティストの方がセメント系材料に入ってこられましたが、ここ数年の論文発表数は半端ではありません。アメリカ化学会をはじめ、こんなところに出てくるのかというようなところにまで、C-S-Hをはじめとした成果が発表されており、日本だけだが、いまでも、パラメータを振ったコンクリートの強度試験をやってます。

私は、海外出張をするたびに、このままではいけないと強く思います。大学で「学問」をするわけですから、貪欲に他分野の人とコラボをして、前進させていく必要があると思います。


また、最近の材料研究は、材料研究に閉じこもっています。いったい建築材料は何のためにあるのでしょうか。構造なり、環境なりで、喧々がくがくの議論をしているときに材料研究者は彼らになにを伝えることができるんでしょうか。
つかってもらってなんぼの材料なのに、なぜ、アウトプットまで視野を広げないのでしょうか。

JCIでは収縮耐久性力学という委員会を実施していますが、建築側の検討が少ないことに愕然とします。とはいっても、対策はできていて、うまく機能はしています。評定と建築基準法に守られて、なぜ、とつっこまない体制ができているんじゃないでしょうか。

今後は、
・理学の人と組み、物理・科学的にさまざな問題を解き明かすこと
・構造、環境、その他の分野の人と組み、出口につながる問題点を共有し、素材-材料-構造といったことの体系化をはかること

ということについて、大学の立場で研究を実施していきたいと考えています。

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